YAMAHAサックスの名器YAS-62。

現在でも定番のサックスとして学生から大人まで幅広い世代に使用されています。

そんなYAS-62ですが実は長い歴史を持つ楽器でもあります。

今回はその中でも初代YAS-62について紹介させていただきます。

ややマニアックな内容ですが楽しんでいただけたら幸いです。

初代YAS-62とは

ご存知の方も多いとは思いますが簡単に紹介させていただきます。

初代YAS-62は1978年から1995年まで製造されたサックスで、当時覇権を握っていたSelmer Mark.Ⅵに近い音色を持ちながら音程や扱いやすさなどをYAMAHA独自の設計で改良したモデルです。

その技術や構造は現代のYAMAHAサックスの礎になっているとも言われ、まさにサックスづくりの原点ともいえる楽器です。

J型のキイガードやプリントされたロゴなど現在の62にはない特徴を持つことから一目で分かる方も多いのではないでしょうか。

現在では主にジャズやフュージョンなどで使用するプレイヤーが多く、国内外問わず人気の楽器です。

各年代ごとの解説

一言に初代YAS-62(以下初代62)と言っても20年近くの間製造された楽器です。

途中でマイナーチェンジなどを繰り返しながら製造されていました。

この記事では初代62を独自に初期、中期、後期に分けて解説していきます。

有名なあの特徴をもつ初期

少し詳しい方なら初代62最初期の特徴といえばコレ!とすぐに浮かぶかもしれません。

そう、縄目模様の入った胴輪です。

胴輪とはサックスの管体同士(2番管とU字管、U字管とベル)をつなぐ部品です。

この模様は前モデルのYAS-61と同じでもありMark.Ⅵにも似た模様を見ることができます。

一部では花模様・ラーメン模様とも呼ばれています。

この模様はシリアルナンバー010500前後の個体まで存在し、その後は現行品のようなコインエッジ模様に変更されています。

この時代の正確な記録は公式にも残っていないようですが、おそらくこの縄目模様が見られる個体は1970年代のものと見ていいでしょう。

変更された胴輪の模様

有名な胴輪の模様ですが、実はさらに最初期の個体を見分ける方法があるのをご存知ですか?

それはLowC#キイの機構です。

最初は板バネ方式だったのがシリアルナンバー005000前後で針バネ方式に変更されています。

胴輪に加えてこの部分を見ればさらに古い年代のものかどうかが分かります。

左(変更前):板バネ式 右(変更後):針バネ式

以上が初代62初期の解説です。

初代62が約70,000台製造されたことを考えると#010500までを初期とするのは中途半端かもしれません。

しかし、縄目模様が有名かつ大きな指標の一つになっていることからここで区切るのが分かりやすいと考えました。

Mark.Ⅵの影響が色濃く残りヴィンテージ感の強い時代の62。希少ではありますがロマンを求める方におすすめの年代です。

多くのチェンジを繰り返した模索時代の中期

ここからは中期の解説です。

シリアルナンバーでは#010500前後~#045600前後までをここでは中期とします。

非常に長い期間のためそれだけ多くのマイナーチェンジが行われています。

一つ一つ見ていきましょう。

まずは胴輪のネジの向きです。

シリアルナンバー020000前後で変更されています。

変更前はキイなどが付いていない側(奏者から見て左側)からネジ止めだったものが、変更後は逆になっています。

逆になったネジの向き

次にパームキイとTa、Tcのキイポストの取付方法の違いです。

シリアルナンバー022500前後で変更されています。

変更前は全て単体で管体にはんだ付けされていました。

変更後はキイポストをまとめた座金を管体に取り付ける方式をとっています。

これは演奏感にも影響を与える変更といっていいでしょう。

ネックに近い部分の重量を大きくすることで演奏時の抵抗感を大きくし、楽器のパワーを増す狙いがあったと思われます。

実際に現在のサックスはそのほとんどがこの形式を採用しています。

年代で言えば1985年頃のことでサックスに求められる音量やパワーが大きくなっていったことに答える形の変更と言えます。

変更されたキイホストの取り付け方

3つ目はサイドF#(Tf)キイのガード形状の変更です。

シリアルナンバー036600~03900前後で変更されています。

変更前はYAS-61から続いている甲冑のようなデザインでしたが変更後は現行モデルと同じ形状になりました。

変更されたキーガードの形状

以上が中期の解説です。

細かな変更が多い中期ですが、現行モデルまで続く変更があったり、演奏感に変化をもたらすチェンジがあったりと小さいながらも重要な変更点が見られます。

1980年代というサックスに求められる役割や性能が劇的に変化してきた時代を表している年代の楽器です。

初代62=プリントロゴではない?初代最後の時代後期

初代62といえばプリントロゴ(紫ロゴ)!と思われる方も多いのではないでしょうか。

実は後期モデルはプリントでのロゴを廃止し現在と同じデボス加工になっています。

シリアルナンバーは#045650前後で変更されています。

年代は1980年代終わりから1990年と思われます。

ネックのブランドロゴの色が紫から青に変更されたのもこの時期と思われます。

変更されたロゴ
ロゴの印字方式の変更に伴いブランドロゴの削除など内容も変更されている

このロゴの変更ですが実は銀メッキモデルであるYAS-62Sでは最初期からデボス加工によるロゴを採用しています。

もっと言えば前モデルのYAS-61Sでもデボス加工のロゴです。

銀とプリントロゴの相性が悪かったからとも予想できますが、なぜ管体に刻印できる技術を持っていながら剥がれやすく耐久性の劣るプリント方式を採用したのかは不明です。

初代YAS-62Sのロゴ
この年代はまだプリントだが銀メッキのものは刻印になっている
またロゴの内容も方式が変更される前のものと同じである

ロゴの方式の変更だけでも現行モデルに近づいたように感じますがまだ重要な部分が残っています。

それは型番やシリアルナンバーが刻印されている部分にMade in Japanという刻印が追加されたことです。

シリアルナンバー059500前後で変更されています。

同時期に販売が開始された初代YAS-875やYAS-855などもこの刻印が存在することから統一するための変更だったと思われます。

シリアルナンバーの下に新たにMADE IN JAPANの刻印が追加されている

この刻印のある個体ですが、シリアルナンバーから10,000台前後しか製造されていないと予測できます。

そのためほとんど注目されてはいませんが意外とレアなモデルなのでは?と個人的には思っています。

まとめ

いかがでしたか?

今回はYAS-62の中でも初代モデルについて詳しく解説させていただきました。

この記事の内容について補足や別視点からの考察などがあれば、SNS等でぜひお聞かせください。

また、初代62に興味を持っていただけた方や欲しくなってしまった方は当店のSNSやオンラインショップをチェックしてみてください。

入荷しましたら詳しい解説とともに掲載しております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

当記事の内容は個人的な情報・楽器の収集により得た知見を元に執筆しております。
メーカーの公式的な内容ではございませんのでご注意ください。

ABOUT ME
Ryusei
中学から吹奏楽部にてサックスを始める。中高と吹奏楽を学び、大学ではビッグバンドサークルに所属。その後は独学でフュージョン・スムースジャズを勉強中。吹奏楽、ジャズ、フュージョンと多くの音楽ジャンルを経験し、現在はその知見や楽器に関する知識を生かしサックス専門店にて勤務。