サックスはリードを振動させて音を出す木管楽器です。
そのため、サックスの音の源となるリードの扱いは古くからサックスプレイヤーの頭を悩ませてきました。この問題、サックス吹きなら誰しも経験があるのではないでしょうか?
初心者のうちからリードの扱いや管理に慣れておくのはとても大事なことです。また、普段から演奏にいそしむプレイヤーの方も、この機会にリードの基本を振り返ってみましょう!
本ブログに寄稿していただいているKAREN先生・森山瑞樹先生の、普段のリードの扱いについてのインタビューも掲載しています!
今回は「【サックス】リードの基礎知識 選び方や育て方、調整の方法は?」についてまとめてみました。
リードの基礎知識
一口にリードと言っても、多くの種類が存在します。リードの基礎知識について知っておきましょう。
シングルリードとダブルリード
リードを振動させて音を出す木管楽器には、大きく分けて2種類があります。
- 重ね合わせた2枚のリードを振動させる「ダブルリード」(オーボエ、ファゴット、イングリッシュホルンなど)
- 1枚のリードをリガチャーでマウスピースに固定して振動させる「シングルリード」(サックス、クラリネット)
ダブルリード
シングルリード
リードを持たないフルートも木管楽器に属していますが、エアリードという呼び名だそうです。
ちなみにリードに最も使用される材質は葦(あし)という植物ですが、近年では合成樹脂も素材に使われ、本物に近い性能を持つ樹脂リードも続々と登場しています。
リードのカットによる違い
リードは振動する面のカットの形にも種類があります。
上:ファイルドカット(フレンチカット)
下:アンファイルドカット(アメリカンカット)
ファイルドカット(フレンチカット)
カットされている面全体を指して「ヴァンプ」と呼びますが、U型にカットされたヴァンプの根元を、もう一度直線にカットしたリードのタイプをファイルドカット(若しくはフレンチカット)と呼びます。
ファイルドカットは一般的に、音の立ち上がりが良く、まとまりのある明るい音色の傾向にあるとされ、クラシック奏者や吹奏楽向けによく使用されます。
アンファイルドカット(アメリカンカット)
ヴァンプ根元をU型にカットしただけの加工をアンファイルドカット(若しくはアメリカンカット)と呼びます。
ファイルドカットに対して反応はやや悪くなる傾向にありますが、ダークな音色が特徴で、ジャズプレイヤーに好まれます。
また、演奏に際してもアンファイルドカットの方が難しい傾向にあるため、初心者の方はヴァンドレントラディショナル(青箱)、リコーグランドコンサートなどの扱いやすいリードを選ぶと良いかもしれません。
リードの番手
リードについている番号を「番手」と呼びます。
番手はよくリードの厚さと勘違いされがちですが、番手はリードの硬さを表します。
ヴァンプの根元から先端までの厚さのバランスには各メーカー、モデルにより異なり、さらに使用するリードケーンの種類なども加わる事でそれぞれの異なる特徴を出しているわけです。
リードの選び方
リードは多くのメーカーが発売しており、それぞれに特徴を持っているため判断にこまる方も多いのではないでしょうか?
ここでは、リード選びの参考になる一例と、各メーカーの硬さの比較表をご紹介します。
ジャンルに合わせて選ぶ
前述したように、ファイルドはクラシック向けの傾向、アンファイルドはジャズ向けの傾向、とされるのが一般的です。
また、ヴァンドレンJAVA(通称:緑箱)のように、元々アンファイルドの物の根元をカットしてファイルドにした、「ヴァンドレンJAVA赤箱」といった物も存在します。
リードのしなりはジャズ向けの物そのままに、アンファイルドカットの明るさ、反応のよさがバランス良くマッチする事でロックやポップス、フュージョンに向いた派手な音色の傾向を持つ、といった物です。
このように、リードの特徴は千差万別で、この要素がサックスプレイヤーを迷わせる一因にもなっているわけです。
自分の演奏するジャンルを意識してリードの種類を選ぶ際には、「そのジャンルで最もメジャーとされる物」(ジャズならヴァンドレンJAVAやリコージャズセレクト等、クラシックならヴァンドレン青箱など)をまず試してみる事をおすすめします。
リードを気にし出したら、お金がかかってしょうがないですよねほんと。
初心者向けの硬さ
初心者の方には最初は柔らかめの番手をおすすめします。
自分が吹ける以上に硬いリードはストレスの原因にもなりますし、唇や顎を痛める原因にもなります。
柔らかい番手で練習し、だんだん一般的に標準とされる番手に上げて行くと良いでしょう。
「標準とされる番手」に上げる必要性としては、主に音色の密度や太さ、響きといった要因があります。
必要最低限の音色の密度や太さ、響きが足りないと、吹奏楽では上手くアンサンブルできなかったり、ジャズではか細い弱々しい音になったりと、音楽に影響を与える事になってしまいます。
主要メーカー別リード比較表
主要メーカーのリードの比較表になります。
メーカーごとに素材や造りが違うなどの点から、必ずしもこの表の通りの吹き心地とは限りませんが、参考にしていただければと思います。
ヴァンドレン リード比較表
引用元:野中貿易公式ホームページ
RICO リード比較表
引用元:石森管楽器公式ホームページ
樹脂リード比較表
引用元:島村楽器公式ホームページ
リードの育て方
リードは購入後、全てがすぐ使えるものではありません。
徐々に慣らしながら鳴るリードを選別し育てていきますが、それぞれのプレイヤーにやり方があり、ネット上にも様々な情報が氾濫しているため、結局どれが正しいのかわかりませんよね!
そこで、本ブログ上で寄稿・監修をしているプロサックスプレイヤーのKAREN先生と森山瑞樹先生に、普段リードをどのように扱っているかインタビューしてみました!
KAREN先生・森山瑞樹先生のリードの育て方
その後、1度軽く吹いてみる程度に抑えて感触だけ確かめて、次の日もう一度、もう少し多めに吹きます。そこから良さそうなリードを選別して、本番用、練習用と分けて育てています。
本番用は一番鳴るように育った後は本番まで殆ど吹きませんが、本番用はいつも複数枚用意しておきたいですね。
KAREN先生の場合は、箱を開けてから実際に使用できるようになるまで2週間近くかかっています。徐々に慣らしながら選別して確実に育てていますね。
対して森山瑞樹先生は、男らしいワイルドなやり方となっています。
リードは湿気や気温に敏感に反応して変化する水物です。昨日もの凄く鳴っていたリードが、天気の悪い今日は全然鳴らない、というのは私も何度も経験してきました。
そうしたことから、どちらの先生のやり方もなるほど、と思わされるインタビュー内容でした!
リードの調整方法
リードは、バランスが自分に合わない物を専用の道具で削って調整することが出来ますが、それにはある程度の技術が必要になります。
調整にチャレンジしてみたものの、結局上手く行かずに捨ててしまう、というのは経験した事がある方もいるのではないでしょうか?
そんな悩みを解決する便利アイテムを森山先生が教えてくれました!
リードギークは簡単にリードの微調整が出来る便利な道具です!シングルリード用、ダブルリード用どちらも販売されているそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=gO404XSS56w&t=359s
フュージョンで有名なDavid Sanborn(デヴィッド・サンボーン)氏も愛用しているそうです。驚くほど鳴るようになっているのが下記の動画でおわかりいただけるかと思います!
リードの保管方法
リードは演奏中は水分を含みますが、使用後にその水分が乾燥することで繊維が膨張します。
これを繰り返す事で繊維が破壊されたり歪むことでリードは劣化していきます。
また、その日の湿度の違いによってリードのコンディションが大きく変化してしまうのもよくある事です。
常に同じ湿度下で管理することで一定のコンディションを保ち、リードの劣化を遅らせるツールをご紹介します。
リードヴァイタライザーは、付属の保湿ジェルがリードケース内の湿度を一定に保ってくれるため、乾燥しがちな冬や湿気の多い梅雨の季節にもリードの管理に一役買ってくれます。
私も愛用していますが、これを使用するようになってからコンディションで悩む事が少なくなりました!
ただ、梅雨の時期にヴァイタライザーケースに入れて2週間ほど練習をサボってみた所、リードがカビで大惨事になっていたので、あまりにも放置するのだけは避けた方が良いかと思います。
地獄のような光景でしたねあれは。
まとめ
今回は【サックス】リードの基礎知識 選び方や育て方、調整の方法は?についてご紹介してきました!
人によってやりかたは様々にあると思いますので、本記事を参考にご自分の環境にあったやり方を見つけていただければと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!