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サックス三大メーカーとは?各メーカーの歴史と特徴まとめ

サックス本体を選ぶ時にまず最初に基準にするのが、製造メーカーではないでしょうか?

サックスには「三大メーカー」と呼ばれるサックス界を牽引する3つの世界的メーカーがあり、それぞれに歴史と特徴があります。

特徴と一口に言っても、価格、音色、操作性等、その特性は多岐に渡ります!

そこで今回は、「サックス三大メーカーとは?各メーカーの歴史と特徴まとめ」について調べてみました!

サックス三大メーカーとは?各メーカー歴史と特徴まとめ

ヤマハ株式会社

ヤマハ(株) 豊岡工場 転載元:rubese.net

楽器選びにおいてまず最初の選択肢となる3大メーカー。

トップバッターは、世界最大にして唯一の総合楽器メーカー、ヤマハです。

1897年に日本楽器製造株式会社(ニチガク)として発足。ヤマハのブランド名で楽器生産・販売を展開していきます。

現在の社名になったのは1987年。「ヤマハ」という名前は、当初は創業者の名を冠したニチガク製楽器のブランド名でした。

1966年、ヤマハブランドでの管楽器第一号となるトランペットYTR-1を発売したヤマハは、翌年1967年、ヤマハブランド初のサックス、アルトYAS-1とテナーYTS-1を発売します。

その後YAS/YTS23・32、YAS/YSS/YBS/YTS61等、改良を重ねる事12年。

1978年、後に日本製サックスのベストセラーとなる大ヒット機種、YAS62が発売されます。

 「プロフェッショナルシリーズ」と銘打たれた名機62シリーズは、サックス奏者として、また教育者としても名高い巨匠ユージン・ルソー(Eugene Rousseau)氏監修の元開発されました。

その系譜は現在も途絶える事無く62の銘を引き継ぎ、現行モデルは4代目となります。

ユージン・ルソー氏(Eugene Rousseau)80歳

転載元:thunder-sax

また、10年後の1988年にはトッププロの要求にも応えるハイエンドモデル「カスタムシリーズ」YAS855・875が発売となり、現在のヤマハ製サックスのラインナップが完成。

その後もヤマハ製サックスは進化を続けます。

2002年には日本を代表するサックス奏者、須川展也氏監修のYAS875EXを発売、翌2003年には初代62シリーズを現代の技術で大胆にアレンジしたYAS82Zと、進化したカスタムシリーズを発表。

 

62/82/875各機種ともマイナーチェンジが幾度となく行われ、改良にも余念がありません。

ヤマハ製サックスの最大の特徴としては、何と言ってもその品質の安定感にあります。

楽器職人の手によって1本1本ハンドメイドで生産されるサックスは、その生産方法によりどうしても個体差、バラつきがでてしまいます。

ヤマハ製サックスは、そういった個体差を徹底した品質管理により極限まで低減することに成功。

本来職人の感のみによって管理される品質基準を数値化するなど、大企業ならではの、他社には真似出来ない生産方法を取る事により生産コストを低減。

価格に対する品質のコストパフォーマンスにも非常に優れています。

また、市場への安定した供給、設計精度の高さ、豊富なラインナップにより、中・上級者はもちろん、初心者が最も安心して購入できるメーカーと言えるでしょう。

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柳澤管楽器(ヤナギサワ)

柳澤管楽器 本社工場 転載元shimablo.com

ヤマハ同様、日本のサックスメーカーとなるヤナギサワ。

同じ国内メーカーですが、ヤマハとは大きく異なる特色を備えます。

1896年の創立後、戦後から本格的に楽器の生産販売(主にサックスとフルート)に乗り出したヤナギサワ。

ヤナギサワ製サックス第一号となるテナーサックス「T-3」を制作したのち、ヤマハより11年早い1956年、アルトサックス第一号「A-3」を発表します。

1961年に現在の「株式会社柳澤管楽器」となり、サックス専門の総合メーカーとなります。

1965年にはA-3の上位機種A-5、1966年にヤナギサワ初のテナーサックス「T-5」、バリトンサックス「B-6」を発表。

さらに翌々年1968年にソプラノサックス「S-6」、ソプラニーノサックス「SN-600」を発表し、サックス総合メーカーとしての地盤が完成します。

世界に最初にその名が轟いたのは、1977年の事。

ある楽器フェアにて、ソプラニーノからバリトンまで、5機種15モデルを展示したヤナギサワは国内外から高い評価を受け、その年のうちに世界中に向けた輸出を始めます。

そしてヤマハ社の62シリーズ発売と同じ翌1978年、現在のヤナギサワサックスの原型となる名機「エリモナシリーズ」が誕生します。

エリモナ

転載元:ishibashi.co.jp

エリモナシリーズのモデルナンバーは800。その血統は現行品である900シリーズに引き継がれています。

また、今では当たり前となったソプラノサックスのデタッチャブルネック(管体から外れるネック)を開発したのもヤナギサワでした。

ヤナギサワの特徴として一番に挙げられるのが、管体の素材・塗装・メッキの種類の豊富さでしょう。

国内初となる銀メッキ製サックスから始まり、金メッキ、ピンクゴールドメッキなど豊富で美しい表面処理があります。

さらに銀製のボディをクリアラッカーで仕上げた「シルバーソニック」、銅の割合を増やし音楽性を高めた真鍮素材「ブロンズブラス」など、管体と表面処理の組み合わせにより、無限の可能性を秘めたラインナップを誇ります。

また、一部ハイエンドモデルにはネックやキイの細部に至るまで彫刻が施され、素材や表面処理も相まって、その美しさは芸術品の域に達しているとまでに評されています。

下町の町工場から始まったヤナギサワの技術力は、まさに「日本の町工場の底力」を体現しているといえるでしょう。

注意点として、銀製の管体や、メッキが幾重にも施された一部のモデルは、楽器そのものの重量はもちろん、吹奏感もある程度の重さがあります。

こうしたサックスは、吹きこなすのにそれなりの技量が必要となるため、使う人を選ぶ楽器ともいえます。

その分使いこなせた時の鳴り方はオンリーワンといえるものになりますが、特に初心者のうちは「WOシリーズ」などの扱いやすいモデルをおすすめします。

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Henri Selmer Paris(セルマー)

セルマー・パリ本社入り口

転載元:blog.livedoor.jp/kazoo_hx

セルマーの歴史

三大メーカーのラストとしてご紹介するのは、原点にして王道のサックスメーカー、フランスのセルマーです。

セルマーの歴史はそのままサックスの歴史といってもいいでしょう。まずは、セルマー(=サックス)の歴史を見ていきましょう。

1840年、アドルフ・サックスが「サクソルン」と呼ばれる低音楽器を発明し、これを生産するため1842年、アドルフ・サックス社をパリに設立します。

そんな中、1846年にアドルフ・サックスは新しい木管楽器「サクソフォン」を発明。

アドルフ・サックス(1814~1894)

転載元:Wikipedia

木管楽器並みの柔らかな音色と細やかな操作性、金管楽器並みの音量と響きを併せ持つサクソフォンは、瞬く間に注目を集めます。

時は過ぎて1880年、後のHenri Selmer Paris創業者となるヘンリー・セルマーがパリ音楽院を卒業。クラリネット奏者として活躍を始めます。

1885年にセルマー・パリを創業しますが、この時はまだクラリネットのリードやマウスピース、本体を製造し販売する会社でした。

ヘンリーの弟であるアレクサンダー・セルマーも兄と同じパリ音楽院でクラリネットを学びますが、彼は卒業後にアメリカへと渡り、様々な交響楽団に所属します。

アレクサンダーがニューヨークに店を出し、兄ヘンリーの製造するクラリネットと関連用品の販売を開始。

1904年、セントルイス万国博覧会に出品したクラリネットが金賞を受賞したのがきっかけとなり、その名前が一気に有名になります。

これを機にビジネスチャンスをつかんだセルマー兄弟は、1929年、サキソフォンを発明したアドルフ・サックス設立の会社を買収。

こうして、アドルフ・サックスの産み出した「サックス」という楽器の唯一の継承者となる、セルマー・パリ社が誕生します。

1954年には伝説とも言える名機中の名機「Mark.6」を発売。このモデルが世界的な評価を得て、世界的なブランドとしてその地位を不動のものとなりました。

1960年~1970年代に起こったベビーブーム、義務教育での音楽教育の充実化により、楽器ビジネスはその市場を急速に拡大していきます。

その流れの中でセルマー社は弦楽器メーカーや金管楽器メーカーなどを買収し、1995年にセルマーインダストリーズが設立されます。こうして現在に至るまで、世界的な総合管楽器メーカーにその名を連ねる事となりました。

余談になりますが、ニューヨークに兄の楽器製品を販売するために店を出した弟アレクサンダー・セルマー。

これが、現在では新品のサックスよりも遥かに高額で取引されるヴィンテージサックス「Mark.6」を製造する、セルマー・USA(通称アメセル)の原型となります。

Mark.6はフランスでも生産されていましたが、とりわけアメリカで製造されていたMark.6が現在では価値が高い、とされています。

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セルマー・パリのサックス

ご紹介した通り、サックスを製造販売するメーカーの中で最も古い歴史を持つセルマー・パリ社。

ヴィンテージと呼ばれるモデルから順を追って説明していくとかなりの長大な記事になってしまうので、ここではあえて1機種のみをご紹介したいと思います。

 Super action80 Serie2(スーパーアクション80 シリーズ2)。世界で最も人気があるサックス、といっても過言ではないでしょう。

1981年、前述したMark.6の後継機Mark.7に代わって、セルマーの代表モデルとしてスーパーアクション80(通称シリーズ1)が発表されます。

正式に公表されていませんが、スーパーアクション80は発売以降積極的にマイナーチェンジを取り入れ、スーパーアクション80 シリーズ2を経て現行の「ジュビリー スーパーアクション80 シリーズ2」が誕生します。

2020年現在、実に39年に渡り生産され続けている、超ロングセラーモデルですね。

その伸びやかな倍音、力強い音の伸び、パワー、ダイナミックレンジ、どれを取ってもほぼすべてのジャンルに適応する、とされています。

また、他社がそれぞれの特色を持った音色であるのに対し、セルマーのシリーズ2は奏者の特色を色濃く反映し、その意思によって千差万別に変化するのも、オールマイティと言われる所以でしょう。

サックスにおいて、星の数ほどのメーカー・機種の中から一つだけ「これがサックスの音だ」という機種を選べ、となったら、間違い無くシリーズ2です。

ご年配の方にはサックス=セルマー、というイメージの方もいらっしゃるかと思いますが、サックス=セルマー=シリーズ2、という図式が成り立つほどの人気をもつ楽器です。

2つ難点を上げるとすれば、1つ目は、持った時のキイの配置が日本人の手にはやや広い所。

ヤマハ等日本製のサックスと持ち比べてみるとわかりますが、セルマーは指を開く感覚がかなり大きめです。吹きこなすには、ある程度の慣れが必要でしょう。

もう一つは、その価格。2020年3月現在、メーカー希望小売価格が565,000円(税抜)と、かなりの高額です。

ただ、それでも初心者から上級者までシリーズ2を求める方が後を絶たないのは、それなりの理由があります。

購入資金さえ用意できるならば、シリーズ2は初めてサックスを持った日から、一生あなたの良き相棒となるでしょう。

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まとめ

いかがでしたか?

各社とも、それぞれに深い歴史と特色があり、値段もかなりの幅広さがあることがお分かりいただけたかと思います。

楽器選びはもちろん個人の経済状況にも左右されますが、最初から良いものを購入するのか、初心者向けの比較的安価ものを購入して後にハイエンドモデルに買い替えるか、等、考え方も人それぞれですよね。

どれが正しいとは一概に言えませんが、ただ一つ言えるのは、「迷っている時が一番楽しい」という事です。

ともすれば一生の相棒にもなり得る自分の楽器ですから、思い切り迷って納得の行く楽器選びが出来れば、手元に来てしまえばそれが世界に唯一の「あなたの楽器」です。

ここまで読んでくださった皆様に、素敵な一本が見つかるよう祈っております!

今回は、「サックス三大メーカーとは?各メーカーの歴史と特徴まとめ」についてご紹介しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ABOUT ME
wanitaro
楽器工房 鰐田商店代表。某楽器総合メーカーにて管楽器修理技術を習得したのち独立、サックスの修理・調整を得意とする他、自身でも演奏活動を行っています。その傍らフリーランスWebライターとしての活動も行っており、ブログ執筆、HP作成等も得意としています。